2011年7月29日金曜日

Movie No.4
「くつした」 吉江 優(よしえ ゆう)A++

2011年7月25日月曜日

1X10A145 藤森 慧 (ふじもり けい) A+++ 「くつしたが見た未来」


 


薄いメッシュ地のオーガンジーの素材で人間をそのまま包み込める程の大きな袋状の立体作品だ。中に入れば皮膜のように身体にふわりとまとわりつくようで、所々に丁寧に縫い付けられた雲のようなパッチワークのパターンの隙間からは周囲の世界を感じることができる。袋の下部に米を錘として入れたことによって、地面との接触性が高まると同時に心地よい重力を感じることができ安定感と居心地のよさを両立させた。「くつした」の概念を、身体を通して感じ、丁寧に表現した、完成度の高い作品だ。(安東)
1X10A006 有川 愛彩(ありかわ あいさ) A++ 「ittwins」




一膳の橋にボーダーのくつ下をはかせた作品。箸も人間の足も2つで1つではあるが、箸は通常2本で1つとして箸箱や箸袋に入れられるもので、人間の足は片方ずつくつやくつ下をはく。箸は使用する時には袋から出し、使い終わったら袋にしまうが、足は逆である。類似的と相違的をつらつらと考えてしまう作品である。又、なんにでもカバーをかぶせることへの批評をうけとれなくもない。(間下)
1X10A179 山本 浩夢(やまもと ひろむ) A++ 「吸収・発散」



水を張った水槽の中にくつしたにくるまったような身体=足がどっしりと沈んでいる。色とりどりの小さな丸い粒が養分として体内に吸収され、やがてその粒は泡となって発散していくことが表現されているのだろうか。独特の世界観を持った作品だ。水槽をもう少し慎重に選べば作品の質も上がると思われ、その点が残念だ。(安東) 
1X10A139 廣戸 亮(ひろと りょう) A++ 「Good bye , the Poul world」




クッションで満たされたまっくろな箱を頭からかぶる作品。外界から遮断され、闇の中で自己を見つめるための装置であるが、それを被った姿はシュールかつユーモラスで、安倍公房の「箱男」を思い出した。(間下)
1X10A181 吉江 優(よしえ ゆう) A++「色/光を抽出する為の/ひとつの方法/くつしたの図式」

ひどく実験的な手法で提示されたプロセスは、インクの滴下によって色/光を抽出する、というくつ下とは一見関係ないバーチャルな一種のゲーム的な指向を感じさせる。そこから、図式としてくつ下が浮かび上がってくるかどうかは帰納的実験結果ではなく、血という感覚的なサインによって演繹されるものであるらしい。造形がくつ下からもっともほど遠く、混沌としているところは良い。(博多)
1X10A156 松延 浩人(まつのぶ ひろと)A++「足と靴」


直方体を半透明風プラ版と、アルミケガキ芯粉(しんごな)仕上げ風板で構成している。表面で二種素材が蔽入し、前者が包まれるものであり、後者が包むものと考えれば、「くつ下」を抽象的に捉えたオブジェとして見える。透けて見える線材の構成は、押圧力を示しているということであるが、有機的構成を抽象化するには存在感の強さが感じられた方が良いだろう。(入江)
1X10A184 吉田 名保美(よしだ なおみ)A++ 「HEART」


バルサ材で作られた器の中に、心臓が保存されている。ここで選ばれた材料と造形とファスナーという、開閉の手法のミスマッチさが作品を抽象化して感じさせる方向に作用している。バルサのマット感と心臓の表面の光沢感と、その間をファスナーによってフレーミングするという手法が、作品にインパクトを与えている。(博多)
1X10A100 田熊 隆貴(たぐま りゅうき) A++「uneasy」



大小の凹凸によって形成されるベース面とそのベース面にフィットする形で張られたガーゼによるランドスケープが表現されている。「ある部分は身体に同化し、拘束し、ある部分はルーズに接することによって、くつしたの機能的な要素が開放する」という。表面にはられたグリッド状のガーゼの編み目のゆがみ、伸縮の肌理を通じて直感的に伝わってくる。(博多)
1X10A155 松縄 暢(まつなわ みつる) A++ 「無題」



ステンレスメッシュの薄いシートが、ほぐれて、絡み合い、立ち上がっていく様子は、何かをくるもうとしているように見える。包みが地面と接触している平面的な部分と、地面から浮き上がる立体的な関係を、一枚のシートから連続的につくることによって表現したところが面白い。(安東)
1X10A088 鈴木 雅一(すずき まさかず) A++ 「無題」




うちわの樹脂の骨を空間をくるむように合わせながら、布・紐で締め込んでいる。平面の図形が二次曲面の立体図形へと変遷し、身体の一部を包み込むのを想起できるものとなっている。なまめかしさも感じられる作品である。(入江)
1X10A014 泉 貴広(いずみ たかひろ) A++ 「無題」



円弧状の厚紙を並べた作品。弧というある一部の領域を囲う形状を用いたことで、ゆるやかな空間が生み出されている。視覚的に纏うとでも言えようか。シンプルな構成が美しい。(間下)
1X10A112 鉄川ななみ(てつかわ ななみ) A++ 「無題」


スノウボードを下地材に、仕上げ紙を両面にはりつけた円盤を作り、円弧状に層を重ねてカッターで切り込みを付けている。中央の部分を頭上に置いて自重で垂れるとスゲ笠となる仕組みである。平面に切り込みを入れて立体とする段階を超えた、もう一工夫がほしかった。(入江)
第八課題 「くつした」 出題:安東 陽子



靴下は肌着と同じく直接身に付ける、もっとも身体に近いモノであり、靴擦れを防ぐ、汗を吸う、装飾する、等々の様々な機能をもっています。これらから連想されるような、「くるむ」、「包む」、「守る」、など自分の身体を通して感じるものという概念から自由にイメージを膨らませ、あなたにとっての「くつした」をデザインし、立体作品を製作してください。


提出物:立体(275×275の台に収まる立体)
出題日:2011年7月6日
提出日:2011年7月13日(13時30分時間厳守)
講評日:2011年7月20日

1X10A108 知花 尚志(ちばな たかし)「軽いが重いこと」A++


小さな台座に生けるような形でルーズに結束することで安定感のある繊細な表現を可能にしている。細材を最小限かつ有効な手法でつなぎ材を設ける事によって支点・力点・作用点のようなものが意識化されている。開き止めとして作用するベースにかかる力の流れが全体を一つのパフォーマンスとして感じさせる力を持っている。(博多)


1X10A077 佐藤 洋平(さとう ようへい)「素ツール」A++




粗いメッシュのフレームの中におさまったシートが立ち上がると、100gの重量をもつと思われるスツールの輪郭が浮かび上がり、独特の軽やかさをまとう存在を表現した作品になる。アイディアは独創的だが、作品の完成度をあげるためには、自立するような仕組みを考えられたらよかったのではないかと思う。(安東)
1X10A181 吉江 優(よしえ ゆう) 「無題」A++



白いパッケージが精巧に作ってある。その中に空気に触れると蒸発する不可視の彫刻と、その下部にメンテ用のツールが三段の引き出しに入っている。上蓋をあけると、蒸発した彫刻の台座が残存するという態である。100gの不在のために用意されたツールとはいかなるものか。作品の精巧さが、その問題を浮き彫りにする。(入江)


1X10A145 藤森 慧(ふじもり けい)「Sensation of 100g」A++


料理に使う材料を100gと指定されても、たとえばベテランの料理人は量りにかけずに経験的に適当な分量を手の中でつかむことができる。この作品はそんな、ざっくりとした感覚を思い起こさせてくれる。その100gを思わせる固まりは、これから何かに変化していく可能性を秘め、ねっとりとした、素材感をもって存在している。(安東)


1X10A124 名越 まり(なごし まり)「100gの痛み」A++


無数の楊枝の頭が遠くからはアザミの花のようにみえる。近づくとトゲトゲの立体に仕上がっている。楊枝という小さな単位に着目して、それを大量に用いることでボリューム感とディテールを併せ持つ作品に仕上げた視点は良い。作品をおさめる箱の作り方が丁寧でなく、作品を美しくみせることができてなくて残念だ。(安東)

  1X10A146 古川 茉弥(ふるかわ まや)「Shaving color」A++


100gの削りかすを日常的に使われる器に盛る事によって食感の延長にある、ある種の違和感としてこざっぱりと表現している点が評価できる。いろいろと想像できる反面、表現として見たときの強度に欠ける。(博多)