2011年11月19日土曜日

第五課題 「レスポンスデザイン−スタンド−」 出題:堀真仁(TA)


「ある美術家が「豆腐」と題した作品を発表した。
それは、三日間開催される展覧会に出展される作品である。
しかし、美術家は既存の展示空間では満足いかなかったため、
作品のためのスタンドも自分で制作しようと考えた。」

あなたはその美術家となったつもりで、作品「豆腐」のためのスタンドを制作して下さい。
展示会の期間は三日間。もちろん、その会期中作品が一番魅力的にみえるスタンドであるということが求められる。

「豆腐」も模型で表現し、制作したスタンドに設置すること。
秀逸な豆腐のスタンドを期待します。

*作品「豆腐」は一丁の豆腐を想定し、その解釈は各々の想像に任せます。
*生もの、液体の使用は禁止します。
*豆腐そのものを持ってこない事。

提出物:立体物(275×275におさまる範囲で、高さは自由とする。)
出題日:11月2日
提出&観賞日:11月9日13:30〜
講評日:11月16日

2011年11月16日水曜日

番外編「豆腐(だけ)の講評」

<絹ごし部門> 
1X10A132 林万里亜
     
スタンドでは4番手として講評作品となったが、絹ごし豆腐の作り方においては学年一であった。
なめらかな舌触りと絹ごしのもつ雰囲気をうまく表現している。筆跡が残ってしまっているのが
悔やまれる。(TA堀


<講評対象外部門>
1X10A101 田代晶子
    
講評対象としては挙らなかったものの、豆腐のつくりかたはなかなかの見応えがあった。木綿独特
のテクスチャーを表現し、均整のとれた半丁の豆腐である。手に取った時にその重量感にがっかり
させられてしまったが、つい鍋にいれてしまいたくなるほど、丁寧につくられていた。(TA堀


<講評対象部門> 
1X10A060 黒岩千尋
    
スタンドと合わせて堂々の二冠である。一見本物の豆腐と見間違えるほど緻密に一丁の木綿豆腐が
表現されている。重さも良い。木綿で水分を抜かれた豆腐のもつ絶妙な硬さを、この模型も持って
いる。豆腐に長年かかわっていたのだろうか。(TA堀
1X10A060 黒岩千尋 「無題」A+++­

細い竹材によって編み込まれた、竹のしなりとレスポンスしながら生まれたスタンド。さらに一丁(300~400g)の豆腐を置けば、赤い糸でたわまされたスタンドがピタリと止まる。豆腐のもつ「用」の美、日本の美も感じ取りながら見事に一丁の豆腐とレスポンスを果たしたと感じる。(堀)    

1X10A079 佐野優「豆腐」A++
素材に豆腐と近しいものを使い、シンプルにまとまっている。さらしの上に置かれた豆腐から滲む水は、下に置かれたガラスのボールにためられ、きっと3日の間に徐々にふえていくのであろう。そうした時も同時に感じられる。全体的に行燈のような佇まいもあり、豆腐の持つ静謐さ、素朴さ、そういったイメージに上手く呼応したデザインである。(間下)

1X10A117 中島みづき 「無題」A++
塩の円筒型の築山が青海波模様を伴って整列している。豆腐が半丁の大きさにその上に置かれるのである。直截に受け止めているものは頂部から崩れ、滲み出した水分は周辺の青海波と各々の足許を乱していく。豆腐という属性が時間とともに、塩舞台(?)の様相を揺るがしていくレスポンスデザインは秀逸である。(入江)

1X10A010 石井宏樹 「flow」A++
3日間の展示性という視点をつよく意識した作品に見える。ベースがあって台座があってさらにその上に台座と同じ平面サイズの豆腐が乗っている。豆腐は水分が抜ける為、微かに縮んでいき、流れでた水によって溶け出た4色のラインが最下部のベースの上のパレットで混ざってレインボーな滲みとして表現されている。3日間の展示を何度か訪れた際に、時々刻々の変化を楽しませる指向が盛り込まれている。(博多)

1X10A126 仁平夏美「大豆から」A++
豆腐の原料である大豆が、それぞれ着色され、バランスよく積まれていく。豆が自分で意思をもって寄り集まってきたように、仲良くひしめき合って、ころころとした形で積み重なっている。豆腐のスタンドはそれ自身で自立していて、無彩色のシンプルな「豆腐」の形状とカラフルなオブジェのようなスタンドとのバランスがとても美しい。(安東)

1X10A108 知花尚志 「日本人の手をイメージしたスタンド」A++
一般家庭における豆腐のスタンドというものは母の手であり、それが日本人に育まれてきた豆腐の最上のスタンドかもしれない。発想においては共感を覚えるが、アイロンのような形、そしてなにより豆腐のつくりかたに疑問が残る。(堀)

1X10A090 瀬尾憲司 「1/6」A++
豆腐屋が使う刃のない包丁のように、主人の動作と豆腐のもつ硬さから必然と選び抜かれ、発展したかのような、均整のとれた美しさを持っている。メタル素材の薄さも良いが、折り曲げ方、接合の仕方が雑であると感じる。(堀)

X10A114 戸村陽 「1/8」A++
スクエアな立体としての豆腐の持つ量(マッス)としての抽象的な側面と、ドメスティックな側面の両方が表現されている。映り込みによって表れる虚の量感と、華奢な4本の鉄線のたわみによって釣り合う実の量感のギャップ。皿の上に盛られた残りの7/8と危うい台座の上でかろうじて自立する様とのギャップのようなものが同時的に展示されている点が特徴的である。(博多)

1X10A132 林万里亜 「無題」A++
竹ひごで組み立てたやぐらは各々のJointで糸で緊結され、上部の横架材間を丁寧に編まれた布面が平面を築いている。豆腐の重さが平面に加えられるとき、中間の結節部を視点に微かに揺らぐ。水をたらす豆腐を受ける編まれた布面と、豆腐という重みの揺らぐバランスが適切であって、好感のもてる佳品となっている。(入江)

1X10A100 田熊隆樹 「無題」A++
カテナリーのたわみの上に豆腐を位置づけることにより水分が抜けて、縮んでいくにつれて展示の最初と最後で全く異なる勾配をもったカテナリ―アーチのベースが表れる。時系列での変化が意識されている。
(博多)

1X10A084 庄野航平 「カクドウフ」A++
短冊状にカットした薄い塩ビシートに一定の間隔で切り込みが入っていて、それらが組み上がって竹細工のような立体を作った。その上に収まった豆腐には一部さいの目の切り込みがある。中身の詰まった立体物としての豆腐に対して、平面で構成されたすかすかな空間を占めるスタンドが良い対比となっている。豆腐にもう少し重量があれば、スタンドがしなり、より良いバランスとなった可能性がある。(安東)
1X10A187 和田愛美 「具」A++
豆腐が一番きれいに保たれるのは水の中に浮いている時である。そう断言したくなるような作品。豆腐の浮遊感、角の立ち方、そういったシズル感を上手く表現できている。細かく賽の目にきれいに切った豆腐のもつのどごしのようなものまで思い起こさせられた。ガラスの容器はこの形が適していたのかという点が気になった。(間下)